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大阪地方裁判所 昭和39年(ワ)3818号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕一、まず原告の本訴請求につき、訴の適否について判断する。原被告間に大阪法務局所属公証人吉野淑計作成第四二四二〇号債務承認並びにその履行に関する契約公正証書が存し、右公正証書には債務者、原告井上茂樹、訴外松本隆一、訴外山田国雄、三名は債権者被告に対し金三一〇、〇〇〇円昭和三八年一二月二三日締切の債務負担を承認し、その弁済期日を昭和三八年一二月末日と定め、元金の弁済を遅滞したときは、その遅延損害金として元金一〇〇円につき日歩九銭八厘の割合による金員を支払う旨、債務者三名は連帯責任を以つて右債務を履行することとする旨、債務者各自において右金員の支払債務を履行しないときは直ちに強制執行を受けても異議のないことを認諾する旨の記載の存することは当事者間に争いがない。ところで公正証書が債務名義として有効であるためには、その形式的要件として請求が公正証書の記載自体により、他の請求と区別され得る程度に具体的に特定表示されていることを必要とし、請求の特定を欠く、公正証書は民事訴訟法第五五九条第三号所定の公正証書に該当せず、債務名義としての効力を有しないものといわなければならないところ、前記当事者間に争いのない事実、および<証拠>によれば、本件公正証書には請求の表示として、前記のとおり債務者三名は金三一〇、〇〇〇円、昭和三八年一二月二三日締切の債務負担を承認する旨の記載が存するに止まり、右債務の発生原因である具体的事実については何らの記載も存しないことが窺われ、結局本件公正証書は強制執行の基本となる請求の特定を欠き債務名義としての効力を有しないものといわなければならない。

しかるに<証拠>によれば、公証人吉野淑計は被告株式会社興和のため、本件公正証書につき、昭和三八年五月一九日執行文を付与し、被告は右公正証書の執行力ある正本に基づいて原告所有の動産に対する強制執行に着手したことが認められるところ、右執行文の付与は失当であつて、右執行行為には債務名義に基づかずして執行をなした違法があるといわなければならないから執行債務者たる原告は右執行行為に対して民事訴訟法第五二二条による執行文付与に対する異議の申立によりその違法を是正することができ、形式上一応有効な債務名義の存在を前提とする同法第五四五条の請求異議の訴によることは許されない。よつて原告の本件訴は不適法として却下を免れない。(名越昭彦)

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